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癒やしの空間に潜む危険な影
ヒートショックを防ぐための対策

冷えたからだを温め、一日の疲れた心体を癒やしてくれる「お風呂」。
疲れとともに汚れを洗い流し、無心になれるこのひと時は、特に肌寒い季節には欠かかすことのできない安らぎのリラックスタイムです。

そんな癒やしの空間である浴室には、全く別の顔があります。それは、交通事故で死亡者数をはるかに上回る、
年間推計1万9千人もの方が命を落としている危険が潜む場所であることです。
その中でも死因の割合で多くなっているのが、ヒートショックの影響によるもの。

ヒートショックの原因が「温度差」であることは、すでに周知のことかと思いますが、
このページでは、リスクについてや予防のポイントなどを交えて、より詳しく解説していきたいと思います。

原因

「ヒートショック」とは?

ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所への移動した際などに生じる急激な温度変化が、体にショックを与え、失神、重度の場合では脳梗塞、心筋梗塞が引き起こされる健康障害です。
血圧が大きく変化することが発症の原因となっており、浴室だけでなく寝室での就寝・起床時や朝の着替えの時、トイレやちょっとしたゴミ出しなどの際など、急激な冷気にさらされるシーンであればどこでも発症の危険はひそんでいます。

しかし、暖かい部屋から脱衣所、そして浴室、浴槽内へ移動するという温度の乱調が多くあること、さらに衣服を脱ぐことで寒さに対して無防備な全裸になっているシチュエーションであることから、入浴時はとりわけ危険性の高まる状況となります。体が温まり血液の性状が変わることや、浴槽からの出入りで立ち上がる際の血圧変化も原因のひとつといわれています。
さらに、浴室には転倒で頭や胸部を打ったり浴槽で溺れるなど深刻な事態へと繋がる要素がすぐそこにある場所です。また、密室という性質上、緊急時に助けを呼べなかったり、外部から異変に気付きづらいという問題もあります。

タオルとミネラルウォーター
ヒートショックのメカニズム

こんな方は
特に要注意!

65歳以上の高齢者

ヒートショックは65歳以上の方の発症が多くなっており、高齢者の方は特に注意が必要となります。高齢になると、血圧変化が起こりやすくなり、体温を維持するための生理機能が低下していきますので、男女問わず日常は健康に自信があるという方でもリスクが高まっていることを認識しておかなくてはなりません。

高血圧の方

ヒートショックによる急激な血圧の上下変動で気絶を起こす危険性が高まります。十分に注意してください。

糖尿病、動脈硬化の持病がある

血圧を維持する力が弱まっています。高血圧の方と同様に、血圧の変化には十分に気をつけなくてはなりません。

睡眠時無呼吸症候群、不整脈の症状がある

睡眠時無呼吸症候群には高血圧を慢性的に引き起こしてしまう傾向があります。また睡眠不足は高血圧の発症リスクに繋がると言われていますので要注意です。

夜勤など不規則なシフトでお仕事をされている方

体内時計が狂うと、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、自律神経の働きに障害をきたしてしまいます。血圧を維持するための交感神経がうまく働かず、血圧上昇や心拍数の増加が起こってしまうのです。

一番風呂や熱い湯加減が好きな方

まだ誰も入っていない最初のお風呂は浴室内が冷え切っており、反して湯船のお湯は沸かしたてなので熱くなっています。温度差がより大きい状態ですので、からだに不調がある方は避けるようにしましょう。服を脱いでいる間にシャワーでお湯を壁に当てておいたり、浴槽の蓋を開けておくなど浴室を温めておく工夫も大事です。

食後・飲酒後にお風呂に入る方

食事直後や飲酒時は、血圧が下がりやすくなります。その状態で入浴をするのは血圧の乱昇降を起こし危険です。お食事後は1時間以上間隔を開けてからお風呂に入るようにしましょう。また、その際は入浴前後に必ずコップ一杯のお水を飲んで、いわゆる「ドロドロ血液」になるのを防ぎます。飲酒後のお風呂は危険度が非常に高いですので、入浴前に飲むという習慣自体をなくすよう改善が必要です。

浴室に暖房がない

ヒートショックの大きな要因は温度変化によるものです。その対策として有効となるのが暖房設備の設置になります。最近では浴室や脱衣所にヒーターのあるご家庭も多くなりましたが、もし暖房設備がない場合は設置を検討しましょう。リフォームで導入は可能です。

寝室が2階など、リビングと離れた場所にある

前述のとおり、ヒートショックのリスクはお風呂以外にもあります。寝室での就寝時や朝起きる際も事故が起こりやすいと言われておりますので注意が必要です。一戸建ての場合、普段過ごす居間とベッドルームの場所が大きく離れているケースが多く、就寝の時間に寝室に入ると、その冷気にいつも身震いされているという方も少なくないのでは?実はそれ危険です。布団にくるまって温まるまでの辛抱、じきに眠ってしまうものと考えがちですが、からだの中では異常事態モードが発令されています。エアコンを予めタイマーで付けておくなど、部屋を暖かくしておきましょう。

ヒートショックを防ぐための

つの
対策ポイント

脱衣所と浴室への
暖房設備の設置

ヒートショックによる事故の予防で、まず取り組みたい対策は部屋間での温度差の軽減です。特に危険な要因が揃った浴室の改善は最優先に行うべき場所となります。
消費者庁がリリースした冬季に多発する入浴中の事故についての注意喚起でも、入浴前に脱衣所や浴室を暖めることが予防策のトップに挙げられています。
暖かいリビングから寒い脱衣所、そして浴室へ移動した際の温度変化による身体への負担を極力減らすために、暖房器具で室内を暖めておくなどの工夫をしておきましょう。

新築の住宅では、最初から浴室乾燥機能のついた空調設備が備わっているケースが多くなりましたが、未設置の場合はリフォームで暖房設備付きのバスルームへと改善することができます。
脱衣所は簡易的なヒーターを置くだけでも効果的ですが、室内は狭く、タオルなど燃えやすい物が多くある場所ですので火災の危険があります。必ず燃え移りの心配のない場所に壁掛型の脱衣所暖房機を設置することが望まれます。

浴室暖房機
シャワーで湯はり

バスルームに暖房設備をすぐに置くことが難しいという場合でも、今日からできる対策はあります。お風呂にお湯をはる際にシャワーを使う方法もそのひとつ。給湯器や蛇口から給湯をするのではなく、湯船の蓋を開けて、できるだけ高い位置に固定したシャワーからお湯を流してためていきます。
これにより、浴室内全体の温度を暖めて安定させることができます。
給湯器のように、お湯がたまったら自動で給湯をストップさせることはできませんので、携帯電話のアラーム機能やストップウォッチをはり終わるタイミングで鳴るようにセットして止めに行くなどの工夫をしましょう。

また、すべてのお湯をシャワーで入れるのではなく、途中から10分ほど行うのも効果的です。給湯器の湯量(水位)を少なめ(低め)に設定しておき、給湯が終えたら後は完全にたまるまでシャワーで湯はりを行います。

浴室のシャワー
入浴前後には
しっかり水分補給

入浴をすると、発汗により血液がドロドロの状態になっていきます。
そうなりますと血栓ができやすくなり、血流の乱れから脳疾患や心筋梗塞を起こしやすくなります。
お風呂に入る前と出た後に水分補給をしておくことで、血液の流れをスムーズに保つための働きを促すことができます。

入浴の際にはコップ一杯のお水を飲むことを習慣にしましょう。水分だからといっても、くれぐれもアルコールを飲んでお風呂に入ることはやめてください。

ミネラルウォーターを飲む女性
食後1時間以上あけて入浴

食後は消化器官に血液が集まることで、血圧が下がりやすい状態になっています。
そこで入浴をしてしまいますと、血圧は乱昇降を起こし、ヒートショックを受けやすくなります。
「食休み」は身体にとって大切な行動なのです。お食事の後は少なくとも1時間以上の休憩をあけてからお風呂に入るようにしましょう。

また、入浴前の飲酒も禁物です。血圧低下を起こすだけでなく、酔いによって浴室で転倒したり、湯船で眠ってしまう危険もあります。

淹れたての緑茶
湯温は41℃以下に設定、
長湯はしない

室内とお風呂の温度差が10℃以上開くとヒートショックのリスクが高まると言われます。

住宅環境によって違いはありますが、湯温41℃以下であればこの10℃という数値以上の温度差が開く危険性は少なくなります。

長湯もしないようにしましょう。心臓への負担が大きくなり、疲労も増してしまします。血圧が下がりすぎてしまう恐れもあります。
そして、湯船に入る時にはお湯を軽く身体にかけて水温にしっかりと慣らしてから浸かり、出る際は急に立ち上がらず、身体に負担の掛からないようゆっくりと出るようにしましょう。

給湯器の温度設定
緊急時に外部へ通報できる
体制を

入浴時のヒートショックは深刻な状況へと陥いるケースが多くなります。一刻も早く外部に助けを求めることができるよう、浴室内には呼び出し機能通報機能の設備を設置しておきましょう。
給湯器のリモコンに、呼び出しボタンや通話機能がついているものもあります。

また、同居者は「今〇〇がお風呂に入っている」ということを認識しておくことが重要です。普段から入浴する際には「お風呂入ってきます」といった風に声掛けを必ずするように習慣づけましょう。

浴室と脱衣所の写真
住宅の断熱改修

断熱リフォーム(リノベーション)は、ヒートショック対策以外にも生活環境を改善させる効果があります。住宅の断熱対策には、家の外へ暖気が漏れ出ること、外気が家の中へ侵入することを防ぐ目的があります。外気温の影響を受けにくくなりますので、エアコンの効率が良くなり、光熱費の削減につながります。また、使う素材や施工方法によっては結露やカビの発生を抑制できたり、防音効果も期待できます。
壁や天井、窓、床と断熱対策にもさまざまなリフォーム工法があり、断熱材にも色々な種類の製品があります。リフォームメーカーと相談しながら、効果的な施工を選びましょう。

浴室につきましては、もし在来工法(主に一戸建てで多く採用されている浴室です)でつくられたバスルームをお使いの場合でしたら、ユニットバスタイプに変更することでも断熱性が向上します。ヒートショックを未然に防ぐため、暖房設備の設置とあわせてご検討することも一考の価値があるでしょう。

断熱リフォーム中のリビング
リスクの高い方は
細心の注意を払う

前項で危険度が高いケースにあてはまっていた人は、しっかりと自覚をして注意に努めましょう。
命に関わること、そしてそれは珍しいことではなく、自身にも起こりうる身近な問題であるということを理解してください。
冒頭に書きましたとおり、毎年多くの方が命をおとされています。
そして、高齢者でなく、若い方でも油断は禁物です。一つでも該当するものがあれば要注意してください。

体調管理用の手帳

入浴は健康効果抜群!

お風呂に入ることは健康づくりにとても効果的なことです。疲労回復・新陳代謝の活性化・関節や筋肉のほぐし・むくみの解消をはじめとする肉体的な作用だけでなく、リラックス効果・ストレス解消効果といった精神的な癒やしも与えてくれます。

正しい入り方をすれば、入浴はからだに良いことばかりの貴重なプライベートタイム。
癒やしのひとときを安全・安心に過ごすためには、事故への対策と意識を深めておくことが大切です。

持病やお体に不安のある方は、必ずお医者様の診察をうけ、入浴方法や生活習慣についての指示に従ってください。

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